最新情報

☆☆☆最新のねじ情報誌「やまりん新聞」は弊社ショッピングサイトからダウンロードできます。☆☆☆

ねじの基準山形について(第69号)

これまでにお話してきたメートルねじですが、メートルねじの定義は?ふと疑問に思いJISを調べてみました。JIS B 0101によると「直径及びピッチをミリメートルで表したねじ山の角度60°の三角ねじ。フランス、ドイツなどで一般用ねじとして発達したもので、現在ではISO(国際標準化機構)が国際規格として採りあげた三角ねじ。」とあります。
JIS B 0101では様々なねじ用語の定義が掲載されています。普段何気なく使っているねじ用語ですが、言葉で説明するとなると、困ることがよくあります。今回はねじ用語のJISによる定義を紹介したいと思います。
これまでに本紙に登場した主なねじ用語の定義を表1に掲載します。

表1 JIS B 0101 ねじ用語の中の「ねじ基本」を抜粋
項目 番号 用語 定義
一般 1101 ねじ ねじ山をもった円筒又は円すい全体をいう。
基礎 1202 ねじ山 二つの隣り合ったフランク間の実体部分
1204 基準山形 ねじ山の実際の断面形を定めるための基準となる理論上のねじ山形状。ねじの軸線を含んだ断面形についていうのが普通である。
1206 ピッチ ねじの軸線を含む断面において、互いに隣り合うねじ山の相対応する2点を軸線に平行に測った距離。
1215 有効径 ねじ溝の幅がねじ山の幅に等しくなるような仮想的な円筒(又は円すい)の直径。
1216 呼び径 ねじの寸法を代表する直径で、主としておねじの外径の基準寸法が使われる。
1219 フランク 山の頂と谷底とを連絡する面。軸線を含んだ断面形では、一般に直線になっている。
形式 1301 ねじの呼び ねじの形式、直径及びピッチを表す呼び記号(JIS B 0123参照)。
1302 並目ねじ
(なみめねじ
直径とピッチとの組合せが一般的で、最も普通に使用されている三角ねじ。
1303 細目ねじ
(ほそめねじ
並目ねじに比べて直径に対するピッチの割合が細かいねじ。

 

まずは、「ねじ」という用語のJIS定義を調べました。表1のように「(1)ねじ基本(a)一般」の項目内に「ねじ」の定義が掲載されています。これによると、「ねじ山をもった円筒又は円すい全体をいう」となっています。ところがJIS B 0101では別に「ねじ」の定義があることが分かりました。「(2)ねじ部品(d)ねじ」の項目内で「ねじ山をもった品物の総称。ボルトと対照していう場合は、ナットを組まないで用いるおねじをもった品物の総称」ということです。
つまり、ナットを使用する場合は「ボルト」、ナットを使用しない場合は「ねじ」ということになるかと思います。普段「ねじ」と「ボルト」という用語を厳密に意識して使っていないようにも思いますが、両者の使い分けは興味深いですね。
次は「ねじ山」です。言葉で説明するのが難しそうですね。JIS定義によると「二つの隣り合ったフランク間の実体部分」ということで、かえって分かりづらくなりましたね。そもそも「フランク」という言葉を聞いたことがない方も多いのではと思います。そこで「フランク」という用語を調べると「山の頂と谷底とを連絡する面」ということです。どうもよく分かりませんが、図4に示す、ねじ山の斜面のことのようです。「ねじ溝」はJIS定義によると「二つの隣り合ったフランク間のくぼみの空間部分」ということです。

図3 基準山形

 

図4 おねじ山の要素

ところで、ねじの径を表すのに「呼び径」という用語を使用します。例えば「M10のねじ」という場合に、「10」が「呼び径」です。「M10」は「ねじの呼び」、「M」はねじの種類を表す記号で「メートルねじ」を表します。「呼び径」はJIS定義によると「ねじの寸法を代表する直径で、主としておねじの外径の基準寸法が使われる」ということです。これは分かりやすい定義ですね。つまり呼び径は図3のおねじの基準山形における外径dのことです。
ねじの「ピッチ」もよく耳にする用語ですね。JIS定義によると「ねじの軸線を含む断面において、互いに隣り合うねじ山の相対応する2点を軸線に平行に計った距離」ということですが、図3でいうと、隣り合う山の頂から山の頂までの距離、あるいは谷底から谷底までの距離Pがピッチです。ことばで表現すると分かりにくいですが、図を見るとよく理解できます。
ねじの公差の説明のときによく出てきたのが「有効径」です。「有効径」はJIS定義では「ねじ溝の幅がねじ山の幅に等しくなるような仮想的な円筒(又は円すい)の直径」ということですが、図3でいうとねじ溝の幅とねじ山の幅が共にP/2の一点鎖線の部分で、d2が有効径です。
以上、ねじ用語のJIS定義を紹介しました。用語の説明で言葉を厳選することはかなりの国語力が必要であることが分かります。世の中には国語辞典、専門用語の辞典等がありますが、これらを編纂される方の苦労を改めて感じた次第です。

PAGE TOP