手元に1972年のねじに関するJISハンドブック(※1)があり、現行のJISでは調べられない古い規格を調べるときはたまに参考にします。その中の一部をご紹介します。
ねじの規格でウィットというのを耳にすることがあるかと思います。これはもともとイギリスのねじ規格でねじ山が55度のインチ系のねじのことです(図1参照)。JISではすでに廃止されていますが、現在市場に出回っているウィットねじはまだ沢山あります。特に建築用のボルトではいまだに多く使用されています。
図2 ウィットねじの基準山形 |
ウィットは1972年のJISハンドブックでは付録に載せられていて、すでに廃止されていたということです。
付録には「ウィット並目ネジ(このねじはJIS B 0206-1965によったものである。)」と書かれています。
ウィット並目ネジ?があるということはウィット細目ネジがあるの?・・・。ありました。「ウィット細目ネジ(このねじはJIS B 0208-1965によったものである。)」と書かれています。さらにウィット細目ネジには細目ネジ1号と細目ネジ2号が規定されています。
ちなみにJIS B 0206とJIS B 0208は現行JISではそれぞれ「ユニファイ並目ねじ」と「ユニファイ細目ねじ」ですから内容がすっかり入れ代わったということでしょうか。
参考のため、一部サイズのねじ呼び、山数等を表4(細目ネジ1号)、表5(細目ネジ2号)に掲載します。表4、表5を見て分かるように細目ネジ1号はいわば細目で、細目ネジ2号は極細目ということだと思います。
またウィット細目ネジは呼びがメートル系の整数表記(例えばW22)になっているのが特徴のようです。ウィット並目ネジのようにインチ系の分数表記でないのですね。
ネジの呼ビ | ネジ山数 25.4mmにつき |
ピッチ P |
オネジ | メネジ | ||||
外径 d |
有効径 d2 |
谷ノ径 d1 |
谷ノ径 D |
有効径 D2 |
内径 D1 |
|||
W3/8 | 16 | 1.5875 | 9.525 | 8.509 | 7.493 | 9.525 | 8.509 | 7.728 |
W7/16 | 14 | 1.8143 | 11.112 | 9.950 | 8.788 | 11.112 | 9.950 | 9.056 |
W1/2 | 12 | 2.1167 | 12.700 | 11.345 | 9.990 | 12.700 | 11.345 | 10.303 |
W9/16 | 12 | 2.1167 | 14.288 | 12.933 | 11.578 | 14.288 | 12.933 | 11.891 |
W5/8 | 11 | 2.3091 | 15.875 | 14.396 | 12.917 | 15.875 | 14.396 | 13.258 |
ネジの呼ビ | ネジ山数 25.4mmにつき |
ピッチ P |
オネジ | メネジ | ||||
外径 d |
有効径 d2 |
谷ノ径 d1 |
谷ノ径 D |
有効径 D2 |
内径 D1 |
|||
W21山12 | 12 | 2.1167 | 21.000 | 19.645 | 18.290 | 21.000 | 19.645 | 18.603 |
W22山12 | 12 | 2.1167 | 22.000 | 20.645 | 19.290 | 22.000 | 20.645 | 19.603 |
W23山10 | 10 | 2.5400 | 23.000 | 21.374 | 19.748 | 23.000 | 21.374 | 20.123 |
W24山10 | 10 | 2.5400 | 24.000 | 22.374 | 20.748 | 24.000 | 22.374 | 21.123 |
ネジの呼ビ | ネジ山数 25.4mmにつき |
ピッチ P |
オネジ | メネジ | ||||
外径 d |
有効径 d2 |
谷ノ径 d1 |
谷ノ径 D |
有効径 D2 |
内径 D1 |
|||
W21山14 | 14 | 1.8143 | 21.000 | 19.838 | 18.676 | 21.000 | 19.838 | 18.944 |
W22山14 | 14 | 1.8143 | 22.000 | 20.838 | 19.676 | 22.000 | 20.838 | 19.944 |
W23山14 | 14 | 1.8143 | 23.000 | 21.838 | 20.676 | 23.000 | 21.838 | 20.944 |
W24山14 | 14 | 1.8143 | 24.000 | 22.838 | 21.676 | 24.000 | 22.838 | 21.944 |
ところで給水栓のカタログに掲載されているねじサイズをピックアップすると表6のようなものがあります。管用ねじ、メートル細目ねじ以外にウィット細目ネジが使われているようです。但しピッチは細目ネジ2号よりもさらに細かいピッチのようで、このような規格がJISにあったのかどうかは、もはや資料がないため不明です。ご存知の方はどうかご教示ください。
本題から外れてしまいましたが、給水栓関連のねじは多種存在しますので、「ホームセンターで購入したけれども、自宅で付け替えようとすると、合わない、入らない・・」ということが起こりそうですね。購入されるときは十分お気をつけください。
ウィット細目ねじ | W21山20,W22山20,W23山14,W24山16,W24山20 |
メートル細目ねじ | M22P1.5,M22P2.0,M23P1.5,M24P1.0,M24P1.5 |
管用ねじ | R1/2,R3/4,Rp1/2,Rc1/2,Rc3/4,G3/8 |
給水栓取付用ねじ | PJ1/2,PJ3/4,PJ1(※2) |
※1:参考ですが1972 JISハンドブック「ねじ」は\1500でした。2010 JIS ハンドブック「ねじⅠ」は\6100(税別)です。
※2:インターネットの情報によると、PJは旧表示で現行JISではGだそうです。