今回はタッピンねじの材質について説明したいと思います。市販されているタッピンねじの材質は鋼製(鉄製)とステンレス鋼製があります。
写真1 十字なべ タッピンA |
弊社ではタッピンねじは、材質が「ステンレス」と指示された場合にはオーステナイト系ステンレス鋼(通常はXM7です。以下XM7とする)を材質とするタッピンねじを出荷しています。
他にも、マルテンサイト系ステンレス鋼(通常はSUS410です。以下SUS410とする)を使用したタッピンねじも市販されており、この場合には材質を「SUS410」と指定していただく必要があります。
タッピンねじの材質が違うと、熱処理の有無も関係し、硬さが違ってきます。鋼製では浸炭焼入れ焼戻し、SUS410も焼入れ焼戻ししますので、処理前よりも硬くなります。
XM7は、焼入れ焼戻しで硬くできないため、硬さについては鋼製やSUS410よりも劣ります。
材質違いによる硬さ比較を表3に示します。材質による硬さの違いで、頭飛びやねじ山つぶれ等の問題が発生する場合が考えられますので、材質はもちろんのこと、使用方法(下穴径、板厚等の選定)、トルク管理等を考慮して使用することが重要です。
タッピンねじの材料 | 表面硬さ | 心部硬さ |
鋼製(※1) | 450HV以上 | 200HV~400HV |
XM7(※1) | 320HV以上 | 171HV以上 |
SUS410(※2) | 530~750HV | 350~450HV |
また、SUS410はXM7に比べ錆やすいため、屋外で使用する場合は防錆対策を考慮する必要があります。
余談ですが、SUS410はドリルねじなどに使われている材料です。ドリルねじとは前述のピアス「ウスト」で紹介していますが、タッピンねじの先端にドリルの刃をつけたような形状で、ねじ先端のドリルで自ら下穴をあけて、その後はタッピンねじのようにねじ山を形成しながら締付けるねじです。現場の作業では下穴をあける手間が省けるのでよく使用されています。
※1 JIS B 1055附属書参照 ※2 サンコーインダストリー殿データより
従って※1※2両者の値は出所が違いますので参考程度に比較して下さい。