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ねじの防錆処理について(第55号)

ステンレスの建材用ねじの中には硬度を上げるため熱処理されているものがあり、材質はSUS410等が使用されます。SUS410は錆が発生しやすく、建材用ねじとして使用するためには防錆処理が重要です。従来は後述のパシベート処理が施されることが多かったのですが、それほど防錆効果が高くありません。近年、さらなる防錆力向上のために各種表面処理が開発されています。以下に、建材用ねじのカタログによく掲載されている表面処理について説明します。まずは、ステンレス用の表面処理
パシベート(passivate)処理
硝酸で表面に不動態化被膜を形成します。耐食性の大幅な改善は難しいですが、ステンレス本来の光沢を残すことができます。さらなる防錆力向上を図ったスーパーパシベート処理、エクセレントパシベート処理(丸ヱム製作所)等があります。
SPAC処理(スパック処理)、サスガードSG処理
SPAC処理はサンコーテクノ、サスガードは日本パワーファスニングのそれぞれ表面処理名です。
詳細の仕様は公表されていませんが、要するに両者共、加工品の表面状態を独自の前処理により改善した上で、強固な酸化被膜を形成させた表面処理です。
スズメッキ
建材用ねじではSUS410の表面処理に使用されています。焼付き防止の効果もあり、外観も美しいですが、価格が結構高いのが難点です。

写真1 SUS410テクス皿 スズメッキ

ディスゴ
日本ラスパートが開発した、クロムフリーの高耐食表面処理です。第1層に燐片状亜鉛を主成分とするベース塗料と第2層に有機(エポキシ)または無機(珪酸塩)の樹脂を主成分とするトップ塗料を使用し、被処理物に浸漬またはスプレーで塗布後、180℃から300℃で加熱処理されます。
スチール製ねじにも処理できます。

図1 ディスゴの被膜構造

次はスチール(鉄)用の表面処理です。
SV処理(シルバービック処理)、シルバー
SV処理はサンコーテクノ、シルバーはヤマヒロのそれぞれ表面処理名です。これも詳細な資料はありませんが、いずれも電気亜鉛メッキの上に特殊コーティングを施したものです。電気亜鉛メッキよりも耐食性が優れたものです。

写真2 ビスコン皿 シルバー(ヤマヒロ)

ジオメット処理
金属フレークが層状に重なり、特殊無機バインダーにより結合した被膜です。耐塩水・耐熱耐食性・電食防止効果・非水素脆性にも優れた金属防錆処理です。ジオメットはNOFメタルコーティングスの登録商標です。ダクロタイズドが六価クロムを含むために、環境への配慮からジオメットに切り替わりつつあります。
三価クロメート(三価クロム化成処理)
亜鉛メッキが腐食により変色しやすいため、電気亜鉛メッキ後に三価クロム化成処理を施し光沢と耐食性を付加した表面処理です。以前はユニクロ、クロメートが主流でしたが、六価クロムを含むことから建材用ねじに限定すればここ数年、徐々に三価クロメートに置き換わりつつあります。正しくは、三価クロム化成処理といいますが、一般名では三価クロメート、三価ユニクロ、三価ホワイト等で呼ばれています。耐食性はユニクロと同程度です。

写真3 鉄ピアスPAN三価クロメート

 

近年さらなる防錆力や環境対応が要求されてきており、またそれに加え、亜鉛等の資源枯渇問題も現実味を帯びてくる状況で、より環境に優しく、かつ防錆力の高い表面処理の開発が急務になってきています。

メッキの雑学
薄鉄板に亜鉛メッキを施したものをトタンといいます。最近ではあまり見かけなくなりましたが、ひと昔前は物置の屋根にトタンの波板が使用されていました。

図2 昔なつかしのトタン屋根

また、ブリキという鉄板があります。「ブリキのおもちゃ」で有名ですが、これは鉄板にスズメッキを施したものです。さてこの両者、防錆力に違いはあるのでしょうか?

図3 最近は高値で取引されるブリキのおもちゃ

スズは亜鉛よりも錆びにくく鉄を保護する力は大きいのですが、一度メッキに傷が付き鉄が露出すると状況が変わります(酸素と水が存在する場合)。
トタンの場合はメッキの被膜に傷がついても表面の亜鉛が溶け出して鉄を覆うため、鉄の錆が広がりません。それに対してブリキの場合はメッキの被覆に傷が付くと内部の鉄が溶け出して内部から朽ち果てていきます。ブリキの屋根は使いものにならないようです。
今も昔も鉄にとって亜鉛は無くてはならない存在なのですね。上記腐食のメカニズムに興味がある方はインターネットや専門書籍をご参考ください。

 

 

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