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切削用タップと転造用タップ(第73号)

おねじを製作する場合、ねじ切りダイスやねじ切りバイトによる切削とねじ転造ダイスによる塑性変形の主に2種類の製造方法があることを前回お話しました。
一方、めねじを製作する場合はタップやねじ切りバイトによる切削が一般的と考えがちですが、タップで転造によりめねじを製作する方法があります。
転造すなわち塑性変形を行うためのタップを、JIS B 0176ねじ加工工具用語では盛上げタップと定義しています。別名、転造タップ、ロールタップともいわれており、一般的にロールタップという呼び名が定着しています。ロールタップ(写真1)は切れ刃がなく塑性加工によってめねじを成形するタップです。

写真1 ロールタップ

切削によりねじを製作する場合には材料の丸棒を削り取っていきねじ山をつくるのですが、塑性変形では、ねじ山の谷を押しつぶした際盛り上がった部分が山となります。そのため、ねじ製作時に切りくずが出ないだけでなく、ねじ山の表面がきれいで、切削ねじよりもねじ山強度が高いといわれています。
彌満和製作所殿の技術資料によると、「ロールタップのタッピングトルクは、切削加工でめねじを切る場合に比べ複雑な要因が多く簡単に算出することはできないが、経験上、切削加工用のタッピングトルクに比べ2倍から3倍となる」そうです。
ちなみに上記資料ではハンドタップ(写真2)のタッピングトルクを100とした場合に、およその比較として、スパイラルタップ(写真3)が70~75、ポイントタップ(写真4)が60~65となるそうです。弊社では、通り穴のねじ切りの場合はポイントタップを多用しています。ポイントタップを使うことで切りくずが前方に排出しスムーズなタッピングができることを実感していますので、この数値は納得のいくところです。

写真2 ハンドタップ 写真3 スパイラルタップ 写真4 ポイントタップ

次にタップの下穴についてです。タップでめねじを製作する場合には、タップが通るための穴が必要です。これを下穴といいます。
切削によるタップのねじ下穴径は表1の通りで、ねじの呼びからピッチを差し引いた値で計算することもできます。例えばM10、ピッチ1.5のめねじをタップで切削する場合、そのねじ下穴径は10-1.5=8.5mmとなります。

表1 タップ下穴ドリル径一部抜粋(切削)
呼び めねじ内径 ドリル径
Max Min
M3×0.5 2.599 2.459 2.5
M4×0.7 3.422 3.242 3.3
M5×0.8 4.334 4.134 4.2
M6×1.0 5.153 4.917 5.0
M8×1.25 6.912 6.647 6.8
M10×1.5 8.676 8.376 8.5

一方、ロールタップのM10×1.5の下穴径は表2に示す通り、9.22~9.34mmとなります。従ってロールタップ使用時に切削用のねじ下穴径を使用すると、タップが折損する場合があるので注意が必要です。また被加工物の機械的特性(引張強さ、硬さ、スプリングバック特性、加工硬化指数等)、めねじの有効長さにより加工条件が異なってきますので十分な試験が必要となります。

表2 タップ下穴ドリル径一部抜粋(ロールタップ)
呼び 標準等級 推奨下穴径
Max Min
M3×0.5 G5 2.82 2.75
M4×0.7 G6 3.72 3.65
M5×0.8 G6 4.67 4.59
M6×1.0 G7 5.59 5.49
M8×1.25 G7 7.49 7.36
M10×1.5 G7 9.34 9.22

私、ロールタップは使ったことがなかったので、この機会に試しに使ってみました。被削材S45CにM5×0.8、長さ15mmのめねじ(通り穴)を立てたところ、タッピングトルクが大きいものの、ボール盤が停止することなくスムーズに作業することができ、ねじゲージも合格でした。それぞれの長所と短所を理解した上で、切削と転造を使い分けることがよいのではないかと感じました。

※ この記事の写真、データは㈱彌満和製作所殿資料を参照しました。

 

 

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