先頭の記事で、地球環境に配慮したクロムフリーの話題が出ましたので、ここでは環境対応の表面処理について、もう少し詳細に説明したいと思います。
従来のユニクロ等の化成処理には六価クロムが含まれています。この六価クロムはEUのRoHS(※1)指令で特定有害物質に指定されているために、規制の対象になっています。そこで登場したのがユニクロの代替品で六価クロムフリーの三価クロムクロメートです。近年ではさらに三価クロムも含まないクロムフリーの表面処理が登場しています。以下に代表的な環境対応の表面処理をあげます(※2)。
○三価クロムクロメート(白色、黒色)(有色クロメート、光沢クロメートの代替)
従来の有色クロメートと同等の耐食性が得られます。六価クロムと違い、無害で六角クロムのような擬似的な自己修復性を持ちます。
弊社の名称は三価ホワイト、三価ブラックです。
○ノンクロム亜鉛めっき(白色、黒色)(三価クロムクロメート、有色・光沢クロメート、黒色クロメートの代替)
六価・三価クロムを全く含みません。人と環境にやさしい防錆処理を行っています。傷が付いても自己修復作用があり、有色クロメートと同等の耐食性を持ちます。ホワイトの色調は有色クロメートと光沢クロメートの中間色。ブラックの色調は黒色。
弊社の呼び方はノンクロムホワイト、ノンクロムブラックです。
○ジオメット処理(ダクロタイズド処理の代替)
環境負荷物質である六価クロムを有せず、水系の処理剤を使用する水系完全クロムフリーの処理です。耐熱性、耐食性に優れ、水素脆性の心配が無い薄膜防錆処理は、ねじ・ボルトの表面処理に適しています。
○ディスゴ処理
高張力ボルトなど、水素脆性による遅れ破壊が生じては困る鉄鋼製品のために開発されたクロムフリーの高耐食性表面処理技術です。燐片亜鉛を主成分とするベース塗料、有機(エポキシ)または無機(珪酸塩)の樹脂を主成分とするトップ塗料を被処理物に浸漬またはスプレーで塗布後、180℃から300℃で加熱処理します。
○三価ステンコート処理(従来のステンコート処理の代替品)
従来の六価クロムを含有しているステンコート処理と違い無害です。亜鉛-ニッケル合金めっきであるジンロイを下地に三価クロムクロメート処理を施し、その上に無色透明の防錆コーティング剤であるKコートを施した表面処理技術です。鉄素材にステンレス色の外観と、ステンレス(SUS410)と同等以上の高耐食性が得られます。
○デルタプロテクト処理(ダクロタイズド処理の代替)
六価クロムも三価クロムも含まないRoHS指令、ELV指令(※3)対応の環境配慮型クロムフリー防錆塗料です。
ドーケンMKSシステム社が開発した電気方式ではない薄片亜鉛コーティング(膜厚:5-15ミクロン)で、水素脆性の危険性はありません。
※1 Restriction of Hazardous Substances:危険物質に関する制限
※2 以下説明文についてはサンコーインダストリー株式会社殿の資料を引用しました。
※3 End-of Life Vehicles Directive:欧州連合による使用済み車両に関する指令(2000/53/EC)の通称