前回はめねじの不完全ねじ部がタップによるねじ切り工程で生じることと、ハンドタップ先、中、上げの食付き部長さが違うことで、不完全ねじ部の長さに違いが出ることを述べました。
今回はタップのお話が出たついでに、主なタップの種類とその特徴について述べてみたいと思います。よく知られているタップには、前回述べたハンドタップ以外にスパイラルタップやポイントタップがあります。これらタップの特徴を以下に示します。
○ハンドタップ:
文字通り、主に手回し作業でねじ切りを行うときに使います。ねじ切り時には、切粉がタップの溝の中にたまっていくため、状況によっては、タップを逆回転させて切粉を取り除きながら作業する必要があります。最初に食付き部が5山の中タップを使用し(図3)、止まり穴のときは、次に食付き部が2山の上げタップを使い下穴の奥まで切り進めると、不完全ねじ部が短くなります(図4)。
図3 ハンドタップ5山 中タップ | 図4 ハンドタップ2山 上げタップ |
○スパイラルタップ:
主にボール盤等の低速加工に使用するタップです。切りくずが進行方向とは逆に排出されますので止まり穴のねじ切りに使用します(図5)。切りくずが手前に排出されタップに絡みつくため、切りくずの除去処理をいかに行うかが重要になります。食付き部は2.5山が多いようです。
図5 スパイラルタップ |
○ポイントタップ:
主にボール盤等の低速加工に使用するタップです。切りくずが進行方向に排出されますので、通り穴にねじ切りするときに使用します(図6)。食付き部は5山の製品が多いようです。ポイントタップを止まり穴のねじ切りに使用することは、下穴の奥に切りくずがたまって、タップの折損等のトラブルになりますので、避けなければなりません。
図6 ポイントタップ |
以上簡単に主なタップの種類について述べましたが、この他に、下穴を塑性変形させてねじ山を形成するため切りくずが出ないロールタップがあります(写真7)。また、最近では高性能マシニングセンターに特化し、タップの形状の見直しと刃部の最適設計を基礎から行った、「通り穴用スパイラルタップ」(ヤマワ製)等が商品化されています。
写真7 ロールタップ |
※本記事の画像、文章の一部は株式会社彌満和製作所殿の総合カタログから引用いたしました。