鋼は水素を吸着しやすい性質があり、酸洗い、メッキ処理のときに発生した水素を吸着して脆くなり、これが原因で数日~数年後に遅れ破壊を起こすことがあります。これを水素脆性による遅れ破壊といいます。
特に高張力、高炭素鋼に亜鉛メッキを施した場合にこれが顕著となりますが、水素脆性のメカニズムは分かっていないことも多いようです。
さて、高張力、高炭素鋼にメッキをしたい場合には、水素脆性による遅れ破壊を避けるため、メッキをする対象物の熱処理硬度を上げすぎないとか、メッキ後、すぐに190~220℃の雰囲気中で対象物を加熱し、水素を追い出す「ベーキング処理」を行うと効果的であるといわれています。
一般的に国内で市販されている、生地の六角穴付きボルト(黒色酸化皮膜品)で、ねじの呼びがM20以下のものは強度区分12.9が採用されており、頭部の刻印が写真1のように「12.9」と打刻されているのがわかります。一方、ユニクロメッキ(亜鉛メッキ)品の場合には頭部刻印が写真2のように「10.9」と刻印されており、引張強度(熱処理の硬度)を落としているのがわかります。
またメーカーにもよりますが、ユニクロメッキされた六角穴付きボルトの小箱には写真3のように「ベーキング処理」という表示があります。
このように、適切に処理された実績ある高張力ボルトのメッキ品が市販されていますので、メッキ品が必要なときには、これらを使用することをお勧めします。
写真1 強度区分12.9の刻印(M10) | 写真2 強度区分10.9の刻印(M10) | 写真3 ベーキング処理の表示(小箱ラベル) |