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『タップの機能と選定(2)』(第13号)

今回は前回の続きでタップの表面処理について述べていきます。タップについても、他の切削工具と同様、それぞれの用途に応じて表面処理が施されています。
実際によく目にする表面処理は下記のように酸化処理、窒化処理、物理蒸着法です。
●酸化処理(HOMO処理)
米国LEED AND NORTHRUP社製のHOMO炉が使用されていたのでHOMO処理と呼ばれています。蒸気処理、水蒸気処理とも呼ばれている処理でいずれも電気炉内の工具を500℃~550℃に保ちその炉内へ0.098MPa(1kgf/cm^2)程度の圧力に上げた水蒸気を通すことで30~60分で工具の表面(HSS)に濃い藍色の四三酸化鉄の皮膜が生成されます。この皮膜は多孔質で、これが加工油剤の油留まりとなり、工具の摩擦抵抗を少なくする作用があり、さらにこの処理によりHSS工具の残留応力の除去も行われ工具寿命をより延ばすことになります(図2参照)。なおこの皮膜は硬さを高くする性質はありません。

図2 酸化処理の効果

●窒化処理
HSS工具の表面に窒素と炭素を浸透、工具材質の含有元素と化合させ硬い窒化物を生成させるものです。塩浴窒化処理方法及びイオン窒化処理方法があります。処理温度が500~550℃の範囲で活性窒素濃度や処理時間により異なった処理硬さと処理深さが得られます。
処理後の工具硬さは1000~1300HVとHSS工具の熱処理硬さ850HV(65.5HRC)の約1.5倍硬くなり、耐摩耗性の向上に効果があるほか、工具表面が高硬度のため,被加工材料との親和力が小さくなり、溶着防止や摩擦抵抗の減少により工具性能の改善がなされます。(図3参照)

図3 窒化処理の効果

●物理蒸着法
高真空容器内で蒸着物質(Ti等)を加熱、蒸発させ、放電によってイオン化した粒子を蒸着させる方法です。処理温度が500℃以下と低いので、HSS切削工具に処理しても変形や硬さの低下が殆どないのでHSS切削工具の硬質コーティングは大部分この方法です。(表4参照)

窒化処理品の硬さ(1000~1300HV)に比べ非常に硬く、耐磨耗性、耐溶着性、摩擦抵抗減少等に大きな効果があります。
なおこの記事は切削工具メーカーの(株)彌満和製作所殿カタログより引用させていただきました。

表4 コーティングの膜質と特性
特性\膜質 窒化チタン
(TiN)
炭窒化チタン
(TiCN)
窒化チタンアルミニウム
(TiAlN)
窒化クロム
(CrN)
膜硬さ(HV) 2000~2400 3000~3500 2300~2700 1800~2200
耐摩耗性
耐焼付性
耐熱性
耐酸化性
摺動特性
色相 ゴールド ブルーグレー
バイオレット
バイオレット シルバー
主な被加工材料 炭素鋼
アルミ鋳造品
炭素鋼
硬鋼
ステンレス鋼
アルミ鋳造品
鋳鉄
黄銅・青銅
ステンレス鋼
鋳鋼

 

 

 

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