前記事でご紹介した、ステンレス鋼のA2-70、A2-80といった鋼種区分、強度区分に対する呼び方は、JIS B 1054-1(耐食ステンレス鋼製締結用部品の機械的性質)で規定されており、表1のように鋼種区分と強度区分をハイフンでつなげた表記方法を規定しています。
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鋼種区分は、A(オーステナイト系ステンレス鋼)、C(マルテンサイト系ステンレス鋼)、F(フェライト系ステンレス鋼)のあとに鋼種(鋼種に含まれる化学成分の範囲)を指定するための1桁の数字で構成されます。
そして、ハイフンのあとに強度区分が続きます。強度区分は、締結用部品の引張強さの1/10の数値で示される2桁又は3桁の数字で表されます。
以下ではオーステナイト系ステンレス鋼について述べます。
例えば、A2-70はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304,SUSXM7等)を冷間加工したもので、引張強さの最小値が700MPa(700N/mm2)であることを表しています。
JIS附属書では、A1~A5を次のように解説しています。
鋼種区分A1:切削加工用に特に設計されたもので、高い硫黄含有鋼のため、通常の硫黄含有量の対応する鋼よりも耐食性は低い。(SUS303等)
鋼種区分A2:最も頻繁に使用されるステンレス鋼で、台所用品や化学工場の装置に使用されている。水泳用プール及び海水などでの使用には適さない。(SUS304等)
鋼種区分A3:鋼種区分A2の鋼の性質を持つ、安定化されたステンレス鋼である。
鋼種区分A4:Mo合金で優れた耐食性を与える耐酸鋼である。塩化物を含む環境にも適しているため、広い範囲で使用されている。(SUS316等)
鋼種区分A5:鋼種区分A4の鋼の性質を持つ安定化された耐酸鋼である。
ステンレス製(SUSXM7等)のキャップスクリューでは、パッケージやネジ頭部にA2-70という表記がされているものがありますので、機会があればご覧ください。