前回はあと施工アンカーの中で金属拡張アンカーについてご紹介をいたしました。今回は、サンコーテクノ製あと施工アンカーで「その他のアンカー類」として分類されているものをご紹介いたします(表2)。
No. | 名称 | 取付部 | 施工方法 | 形状 | 施工図 |
1 | エーエルシーアンカーAX | おねじ | ねじ込み式 | ||
2 | めねじ | ねじ込み式 | |||
3 | オールプラグボルトAS | めねじ | ねじ込み式 | ||
4 | オールプラグMG | めねじ | ねじ込み式 | ||
5 | オールプラグ CM,MIL |
めねじ | ねじ込み式 | ||
6 | エーエルシアンカーAZ | めねじ | 打込み式 | ||
7 | オールプラグSPS | 付属のピン | 打込み式 |
エーエルシーアンカーAX:
ALCパネルに使用するアンカーです。おねじタイプとめねじタイプがあります。所定の径、深さの穴をあけ、その穴にアンカーを打込みます。おねじタイプは付属のナットを、めねじタイプは別に用意した締付用ボルトを締込むと、本体のスリーブ2ヶ所が開き、ダブル拡張(写真1:ダブル拡張を試してみました)で強力にパネルに固着します(図2)。
写真1 ダブル拡張の状態(下) |
図2 エーエルシーアンカーAXの施工方法 |
オールプラグボルトAS:
コンクリートやブロックに使用します。あけた穴にプラグを挿入し付属のボルトを引き上げて仮固定後、ボルトを取り外します。その後対象物をボルトで締付けていき固定します。スリーブの材質は以前は鉛製でしたが、近年亜鉛合金ダイカスト製(コーンも含め)に変更されています。
オールプラグMG:
コンクリート、ALCパネル等に使用します。ナイロン製で耐食性に優れています。あけた穴にプラグを差込み、対象物を木ねじで固定します。
オールプラグCM、MIL:
コンクリートに使用します。ポリエチレン製で耐食性に優れています。取付方法はオールプラグMGと同様です。CMタイプは本体の色でプラグサイズの判別ができますので便利です。
エーエルシーアンカーAZ:
ナイロン製で、ALCパネルに使用します。あけた穴に挿入し、内部の樹脂部品を専用のハンドホルダー(ナイロン製は同梱品です)で打込むだけの簡単施工です。
オールプラグSPS:
ナイロン製で、コンクリートに使用します。打込み用のねじ状ピンがセットされています。あけた穴に差込んで、このピンをハンマーで打つだけで施工完了です。取り外すときはドライバーでピンを抜くことができます。
最後に表2のアンカーの一部をピックアップして最大引張荷重を表3で比較してみました。最大引張荷重はアンカーの種類、母材の違い、アンカー材質の違い等で大きく変わり、アンカー選定時には重要な値です。
まずはエーエルシーアンカー(AX-665)とオールプラグ(MG-10x50P)について母材をALC、使用するねじの外径をほぼ同じもので比較します。結果はAX-665が1.9kNと最大引張荷重が大きくなっています。これはAX-665の拡張する金属の板が母材に食い込んで固定されるため、樹脂(MG-10x50P)よりも大きな引張荷重に耐えていると考えられます。
次にオールプラグボルト(AS-640)とオールプラグ(MG-10x50P)について、母材をコンクリートで比較すると、AS-640が7.7kNと圧倒的に最大引張荷重が大きく、AS-640の金属の拡張部が樹脂よりも強力に母材のコンクリートに固着するためと考えられます。
さらにオールプラグ(MG-10x50P)で母材がコンクリートとALCについて比較すると、コンクリートに施工した方が2.9kNで最大引張荷重が大きいことが分かります。やはり母材自体の強度がアンカーの固着力に影響しているのでしょう。
母材 | 種類 | 拡張部 材質 |
最大引張荷重 (kN)※2 |
条件 | ||
ねじの呼び | アンカー埋込み長さ | 固定部 | ||||
ALCパネル | エーエルシーアンカーAX-665 | 金属 | 1.9 | M6 | 54mm | ALC100mmパネル 圧縮強度 4N/mm2 |
オールプラグ MG-10x50P |
樹脂 | 1.2 | 木ネジ 6.2 |
50mm | ALCパネル 圧縮強度 4N/mm2 |
|
コンクリート | オールプラグボルトAS-640 | 金属 | 7.7 | M6 | 28mm | コンクリート強度 21N/mm2 |
オールプラグ MG-10x50P |
樹脂 | 2.9 | 木ネジ 6.2 |
50mm | コンクリート強度 21N/mm2 |
以上の比較から考えると、アンカー材質を金属、母材をコンクリートにすることで、より大きな引張荷重が得られそうですが、現実には母材を選べない状況もあり、アンカーの選定は、引張荷重を重視するのか、引張荷重はそれほど必要ないが施工性を重視するか等、慎重に検討する必要があります。サンコーテクノ様カタログによると最大引張荷重を「これ以上はアンカーに期待できない終局状態の強度」と定義しています。今回ご紹介の「その他のアンカー類」では、「用途に応じた評価検討を行った場合以外は、許容荷重は最大引張荷重の5分の1を安全率の目安」として考えるようです。誤った設計や施工方法は大変危険ですので、アンカーの特性をよく理解した上で設計、使用する必要があります。
※2 1kN≒102kgf
※3 図2、表2の図、写真はすべてサンコーテクノ㈱様のカタログより抜粋しました。
※4 設計時はメーカーカタログを参照してください。