金属拡張アンカーでよく知られているものは、サンコーテクノ製ではオールアンカー、グリップアンカー、ボルトアンカー等があります。これらは打込み方式で、アンカーの一部をハンマーで打込んで固定するものです。今回ご紹介するものは、トルコンアンカーです。金属拡張アンカーではありますが、締付け方式です。一般にはあまり知られていないようですが、使い方によっては結構便利なアンカーです。
写真4 トルコンアンカー |
トルコンアンカーには拡張部の形状で、ウェッジ式、コーンナット式、テーパーボルト式があります。今回、商品が弊社在庫にあった、ウェッジ式の懸垂物取付け用アンカーAW-BWタイプを詳細にご紹介します。
特長はドームワッシャーのつぶれで施工完了が目視確認可能で、さらに引張力に追従し拡張部が開く「追従拡張機能」で安定した強度を発揮します。
写真5はトルコンアンカーAW-BWを分解したものです。先端がテーパーになったテーパー付ボルトの、テーパー部周囲にウェッジが巻きつけられている構造です。写真ではウェッジを無理やり取り外していますが、実際には取り外しできません。一旦取り外すと再使用はできません。
写真5 トルコンアンカー分解図(※2) |
施工前準備として、図1のように高ナットを回し、ワッシャーを本体ラインマーク位置にセットします。ウェッジの意味はくさびということで、施工時に図2のように高ナットをスパナで回転させると、テーパー付ボルトが引き出されてウェッジが拡張し、コンクリートとテーパー部の隙間にくさびを打つようにしてアンカーが固定されます。締付完了の目安は、ドームワッシャーがつぶれるまで締付けた後、さらに1回転回します。
図1 トルコンアンカー施工前準備 |
図2 トルコンアンカー施工図 |
このようにトルコンアンカーは締付け方式ですので、打込み方式と違い、取付器物を破損することがありません。
トルコンアンカーはこの他にTCWタイプ(写真6)、TCC/VMタイプ(写真7)があります。また、天井吊りに使用する高ナットは別売りもされています。同径高ナットだけでなく、異径高ナットもあります(写真8、表1)。詳細はメーカーカタログ、あるいは弊社までお問い合わせください。
写真6 トルコンアンカーTCW | 写真7 トルコンアンカー TCC/VM |
写真8 異径高ナット |
品番 | ねじの呼び | 二面幅 | 全長 |
TN-W3/8xM10 | W3/8(M10) | 14 | 40 |
TN-W1/2xM12 | W1/2(M12) | 19 | 50 |
ところで、テーパー付ボルトを持つアンカーにボルトアンカー(写真9,10)がありますが、こちらは図3のように専用ハンドホルダーを使用しスリーブを打込むことで固定する打込み方式ですので、トルコンアンカーとは施工方法が異なります。
写真9 ボルトアンカー | 写真10 ボルトアンカー分解図 |
図3 ボルトアンカー施工図 |
最後にトルコンアンカー、ボルトアンカー、オールアンカーについて、ねじの呼びがほぼ同径のサイズで最大引張荷重の比較を行いましたので参考にして下さい。
種類 | ねじの呼び | アンカー外径 | アンカー埋込み長さ(mm) | 穿孔径 | 最大引張荷重 (kN)※4 |
条件 |
トルコンアンカー AW-BWタイプ |
W3/8 | 10.0 | 54(45)以上(※3) | 10.0 | 16.9 | コンクリート強度 21N/mm2 |
ボルトアンカー BAタイプ |
M10 | 14.0 | 40 | 14.5 | 17.6 | |
オールアンカー Cタイプ |
M10 | 10.0 | 40 | 10.5 | 10.2 |
(※2)写真5のトルコンアンカーは、弊社の在庫品で古いタイプのため、高ナット側面の円い穴は1箇所ですが、新しいタイプは2箇所あいています(写真8参照)。また、古いタイプの表面処理は有色クロメートですが、新しいタイプは三価クロメートになっています。
ちなみにこの円い穴は寸切りボルトが確実に挿入されているかどうかを確認するための穴です。
(※3)()内はアンカー有効埋込み長さです。
(※4)実際の使用にあたっては、安全率を考慮する必要があります。詳細はメーカーカタログを参照して下さい。
(※5)本文の写真、図は一部を除きサンコーテクノ様のカタログから引用しました。