今回はユニファイねじの許容限界寸法についてお話します。
メートルねじの許容限界寸法は図3のように、アルファベットで表される公差位置と数字で表される公差グレードの組み合わせで指定します。例えば6gとか6H等です。(詳細は62号を参照ください)
図3 メートルねじの公差位置と公差グレード |
ユニファイねじの許容限界寸法及び公差はJIS B 0210(並目ねじ)、JIS B 0212(細目ねじ)で規定されており、表1のように等級で表されます。めねじは等級3B、2B及び1B、おねじは等級3A、2A及び1Aがあり、各等級はJISで表3、表4のように規定されています。1A、1Bは小径のねじの規定はなく、ねじの呼びが1/4以上のみ規定されています。 ねじの精度は、3Aと3Bが最も精度の高い等級で、1Aと1Bが最も精度の低い等級となります。なお必要に応じて、互いに異なる等級のめねじとおねじとを組み合わせて使用することができます。
等級の区分 | 3B | 3A | 2B | 2A | 1B | 1A | |
適用表 | めねじ | (表1※) | – | (表3※) | – | (表5※) | – |
おねじ | – | (表2※) | – | (表4※) | – | (表6※) |
それでは次に表1の等級がどのような許容限界寸法になるのかを説明します。許容限界寸法を説明するには、まず基準寸法の知識が必要です。基準寸法とは図4のユニファイねじの基準山形における理論上の各部寸法のことで、JIS B 0206(並目)、JIS B 0208(細目)で規定されています。表2にユニファイ並目ねじの基準寸法を一部抜粋します。
図4 ユニファイねじの基準山形 (JIS B 0206,JIS B 0208) |
ねじの呼び | ねじ山数 | めねじ | ||
谷の径D | 有効径D2 | 内径D1 | ||
おねじ | ||||
外径d | 有効径d2 | 谷の径d1 | ||
No.10-24UNC | 24 | 4.826 | 4.138 | 3.680 |
1/4-20UNC | 20 | 6.350 | 5.524 | 4.976 |
5/16-18UNC | 18 | 7.938 | 7.021 | 6.411 |
3/8-16UNC | 16 | 9.525 | 8.494 | 7.805 |
次に許容限界寸法ですが、実際のおねじとめねじがはまるためには両者の間に一定のすきまが必要となり、このすきまのばらつきの許容範囲を許容限界寸法といいます。
各等級(3A,2A,1A,3B,2B,1B)の許容限界寸法が基準寸法に対し、どこに位置するかを図3を借りて説明します。
ユニファイめねじの3B、2B及び1Bは図5のように下の寸法許容差EI=0、すなわち、許容限界寸法の下限が基準寸法に接します。つまり、下の寸法許容差は等級(3B,2B,1B)にかかわらず基準寸法と同じで、上の寸法許容差ESは等級(3B,2B,1B)により異なります。
次にユニファイおねじの3Aは上の寸法許容差es=0、すなわち許容限界寸法の上限が基準寸法に接します(図6)。ユニファイおねじの2A及び1Aは上の寸法許容差es<0、すなわち許容限界寸法の上限が基準寸法よりも小さい値になります(図7)。下の寸法許容差eiは等級(3A,2A,1A)により異なります。
図5 めねじ3B,2B,1B | 図6 おねじ3A | 図7 おねじ2A,1A |
参考のため1/4-20UNCのめねじとおねじの各等級の許容限界寸法と公差をそれぞれ表3、表4に示します。
一般に市販されているねじ類はおねじの等級2A、めねじの等級2Bの場合が多いようですが、米国のねじメーカー、アンブラコのカタログによると六角穴付ボルトで呼び径が1インチ以下のときはねじ等級が3Aとなりますので、このねじの場合には3Bのめねじを使用すると、はまらない可能性もありますので要注意です。
等級 | 基礎となる寸法許容差(※1)参考 | 谷の径 | 有効径 | 内径 | |||||
Dmax | Dmin | D2max | D2min | TD2 | D1max | D1min | TD1 | ||
3B | EI=0 | 規定しない | ※3 参照 |
5.615 | 5.525 | 0.090 | 5.250 | 4.979 | 0.271 |
2B | EI=0 | 5.648 | 5.525 | 0.123 | 5.257 | 4.979 | 0.278 | ||
1B | EI=0 | 5.709 | 5.525 | 0.184 | 5.257 | 4.979 | 0.278 |
等級 | 基礎となる寸法許容差(※2)参考 | 谷の径 | 有効径 | 内径 | |||||
Dmax | Dmin | D2max | D2min | TD2 | D1max | D1min | TD1 | ||
3A | es=0 | 6.350 | 6.145 | 0.205 | 5.524 | 5.454 | 0.070 | 4.792 | 規定しない |
2A | es=-0.029 | 6.322 | 6.117 | 0.205 | 5.496 | 5.403 | 0.093 | 4.765 | |
1A | es=-0.029 | 6.322 | 6.013 | 0.309 | 5.496 | 5.355 | 0.141 | 4.765 |
※1 この欄の数値は、D2min-D2又はD1min-D1の計算値と必ずしも一致していない。
※2 この欄の数値は、dmax-d又はd2max-d2の計算値と必ずしも一致していない。
※3 めねじの谷の径の最小許容寸法は規定しないが、谷底と基準山形との間には、原則として多少のすきまを設ける。