上記記事で強度区分という用語がでてきましたので、今回は強度区分の表記について簡単に整理をしてみました。
図1は引張試験で試験開始から破断に至るまでの、ひずみと応力(※1)の関係を示すグラフです。
金属に引張方向の応力をかけていったとき、最初は力を取り除くと、もとの長さに戻る弾性変形が生じます。
応力をさらにかけていき比例限度を超えると、応力を取り除いても元の長さに戻らず塑性変形します。そして、上下降伏点を過ぎた後、グラフのように曲線を描き、破断へと向かいます。この曲線上のピーク部を引張強さといいます。合金鋼の場合には図2のように降伏点が現れないため、永久伸びが0.2%である応力を0.2%耐力としています。
図1 引張試験 ひずみ-応力曲線(軟鉄) | 図2 引張試験 ひずみ-応力曲線(合金鋼) |
さて本題ですが、強度区分12.9の「12」は呼び引張強さの1200(N/mm2※2)を100で割った値を表し、12.9の「9」はこの数字を10で割った値に呼び引張強さ1200を掛けた値1080が0.2%耐力(軟鉄の場合には下降伏点)となります。
前述記事の強度区分14.9の場合には呼び引張強さが1400(N/mm2)、0.2%耐力が1260(N/mm2)となります。
ちなみに1200(N/mm2)はキログラム重に変換すると、122kgf/mm2ですので、1辺が1mmの正方形に122kgfの力がかかっていると考えるとイメージし易いかと思います。
機械的又は物理的性質 | 強度区分 | ||
4.8 | 10.9 | 12.9 | |
呼び引張強さ Rm,nom(N/mm2) |
400 | 1000 | 1200 |
最小引張強さ Rm,min(N/mm2) |
420 | 1040 | 1220 |
下降伏点(呼び) ReL(N/mm2) |
320 | – | – |
0.2%耐力(呼び) Rp0.2(N/mm2) |
– | 900 | 1080 |
※1 ひずみ:試験片の伸び長さを元の長さで割った値
応力:荷重を断面積で割った値
※2 平方ミリメートルです