前述の記事でステンレス鋼のSUS410を紹介しましたので、今回は頭の整理を兼ねて、ステンレスの種類について簡単にまとめてみました。
ステンレス鋼はCr(クロム)が12%以上含まれた鉄鋼材料のことで、鉄が酸素に触れる前に、クロムが酸素と結合して、酸化クロムの不動態被膜を作り、鉄が錆びるのを防止します。
代表的なステンレス鋼の種類は表3のように、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系があります。これらの特徴は下記の通りです。
種類 | JIS記号 | クロム Cr(%) |
ニッケル Ni(%) |
炭素 C(%) |
使用例 |
オーステナイト系 | SUS304 | 18~20 | 8~10.5 | ~0.08 | 写真6 |
フェライト系 | SUS430 | 16~18 | – | ~0.12 | 写真7 |
マルテンサイト系 | SUS410 | 11.5~13 | – | ~0.15 | 写真8 |
SUS420J2 | 12~14 | – | 0.26~0.40 | 写真9 |
〇オーステナイト系(例.SUS304,Cr:18%,Ni:8%)
ニッケルを8%加えることで、耐食性が向上する。また、ねばり強くなり、プレス加工性がよい一方で、切削加工はしにくい。
写真6 C形止め輪軸用(SUS304CSP) |
〇フェライト系(例.SUS430,Cr:18%)
クロムを18%加えたもので、耐食性はマルテンサイト系に比べて優れているが、オーステナイト系に比べ劣る。価格はオーステナイト系に比べ安価。
写真7 キャップスクリュー (SUS430) |
〇マルテンサイト系(例.SUS410,Cr:13%)
炭素を多くすることで、焼き入れ・焼き戻しにより耐摩耗性が向上する。耐食性は上記2種よりも劣る。
写真8 ピアスPAN (SUS410) |
写真9 波形ロールピン(SUS420J2) |
ちなみに、ステンレス鋼のなかで、フェライト系とマルテンサイト系は磁石に付く性質があります。また、一般に磁石に付かないと思われているオーステナイト系も、冷間加工等を行うと部分的に磁石に付く場合があります。
※参考文献
JIS鉄鋼材料入門 大和久重雄 著 大河出版