ねじの強度区分の数字の意味をおさらいしたいと思います。例えば、強度区分8.8の1文字目の8は、100を掛けた値の800が呼び引張強さとなります。ドットの次の8は、10で割った値に呼び引張強さ800(N/mm^2)を掛けた値の640が0.2%耐力(呼び)となります(表3参照)。
引張強さはこれ以上荷重を掛けると破断する限界値で、降伏点はこれ以下であれば、荷重を取り除いたときに変形が元に戻る値です。(※1)
機械的又は物理的性質 | 強度区分 | ||||
4.8 | 8.8 | 10.9 | 12.9 | ||
d≦16mm | d>16 mm |
||||
呼び引張強さRm,nom | 400 | 800 | 800 | 1000 | 1200 |
最小引張強さRm,min | 420 | 800 | 830 | 1040 | 1220 |
下降伏点(呼び)ReL | 320 | – | – | – | – |
下降伏点(最小)ReL | 340 | – | – | – | – |
0.2%耐力(呼び)Rp0.2 | – | 640 | 640 | 900 | 1080 |
0.2%耐力(最小)Rp0.2 | – | 640 | 660 | 940 | 1100 |
ちなみに表3の引張強さや耐力は、単位面積当たりの力ですので、荷重を知りたい場合にはこの値にねじの断面積を掛ける必要があります。JIS B 1082ではねじの有効断面積の算出式を式1のように規定しています。
As,nom=(π/4){(d2+d3)/2}^2 …(式1※2)
式1に各値を代入した結果が表4の有効断面積As,nomです。表3の最小引張強さに、表4の有効断面積を掛けると表5のようになり、前述記事の表1とほぼ一致します。
図2 メートル並目ねじの基準寸法(JIS B 0205-4抜粋、d3はJIS B 0209-1を抜粋) |
ねじの呼び | ピッチ (mm) |
d1 (mm) |
d2 (mm) |
d3 (mm) |
H (mm) |
有効断面積 As,nom |
M8 | 1.25 | 6.647 | 7.188 | 6.467 | 1.082532 | 36.6 |
M10 | 1.5 | 8.376 | 9.026 | 8.159 | 1.299038 | 58.0 |
M12 | 1.75 | 10.106 | 10.863 | 9.853 | 1.515544 | 84.3 |
ねじの呼び | 4.8 | 8.8 |
M8 | 15400 | 29300 |
M10 | 24300 | 46400 |
M12 | 35400 | 67400 |
※1 第140号を参照願います。
※2
d2:おねじ有効径の基準寸法(mm)、d3:おねじ谷の径(mm)
d3はおねじ谷の径の基準寸法d1からとがり山の高さH(表4参照)の1/6を減じた値で、d3=d1-H/6となる。
式1の意味を解釈すると、d2とd3の平均値が(d2+d3)/2で、半径はこれを2で割って(d2+d3)/4…(式2)となり、
円の面積の公式が、円周率π×半径×半径ですから、
この半径に式2を代入すると式1になります。従って、式1はおねじの谷の径と有効径基準寸法との平均値を直径とする面積であることが分かります。