前回、メートルねじの基準山形、基準寸法がJIS B 0205(図1、表1)で規定されていることや、表1の基準寸法通りのおねじとめねじを製作したとしてもその両者をはめることができないとお話しました。今回はその続きです。
図1 めねじ(左)、おねじ(右)の基準山形 |
呼び径=おねじ外径d(mm) | ピッチP(mm) | 有効径D2,d2 (mm) |
めねじ内径D1 (mm) |
10 | 1.5 | 9.026 | 8.376 |
12 | 1.75 | 10.863 | 10.106 |
16 | 2 | 14.701 | 13.835 |
おねじとめねじがはまるためには両者が接するねじ山に一定の隙間が必要です。めねじを製作する場合、ねじ山は図2のように基準山形よりも径を大きく(斜線部)し、おねじは図3のように基準山形よりも径を小さく(斜線部)します。これでねじ山間に隙間ができ、両者をスムーズにはめることができます。この斜線で示した領域を指定するために、JIS B 0209-1では公差位置と公差グレードを組み合わせた公差域クラスを規定しています(図5参照)。各用語の意味は下記の通りとなります。
図2 めねじの公差 | 図3 おねじの公差 | 図4 公差位置 |
○公差位置:
図5において、基準寸法0と基礎となる寸法許容差の位置関係(大きさ、方向)を公差位置といいます。図4のようにアルファベットで指定します。
めねじ→G、H(大文字)
おねじ→e、f、g、h(小文字)
公差位置と基礎となる寸法許容差の対応表を表2に一部抜粋します。
公差位置Hは下の寸法許容差EIが基準寸法0と一致し、公差位置hは上の寸法許容差esが基準寸法0と一致することが分かります。
図5 公差域クラス6G、6gのイメージ図 |
ピッチ P |
基礎となる寸法許容差 | |||||
めねじD2,D1 | おねじd,d2 | |||||
G (EI) |
H (EI) |
e (es) |
f (es) |
g (es) |
h (es) |
|
mm | μm | μm | μm | μm | μm | μm |
1 | +26 | 0 | -60 | -40 | -26 | 0 |
1.25 | +28 | 0 | -63 | -42 | -28 | 0 |
1.5 | +32 | 0 | -67 | -45 | -32 | 0 |
○公差グレード:
公差の大きさを等級で表したもので以下のように数字で指定します。数字が大きくなるほど公差が大きくなります。
ちなみに公差というのは図5において、上の寸法許容差と下の寸法許容差との差の絶対値のことをいいます。
めねじ内径D1→4、5、6、7、8
めねじ有効径D2→4、5、6、7、8
おねじ外径d→4、6、8
おねじ有効径d2→3、4、5、6、7、8、9
公差グレードは、めねじ内径、おねじ外径、めねじ有効径、おねじ有効径それぞれについて規定されています。
おねじ有効径について公差グレードと公差の対応表を表3に一部抜粋します。
呼び径dmm | ピッチ P mm |
公差グレード | |||||||
を越え | 以下 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
公差 μm | |||||||||
5.6 | 11.2 | 0.75 | 50 | 63 | 80 | 100 | 125 | - | |
1 | 56 | 71 | 90 | 112 | 140 | 180 | 224 | ||
1.25 | 60 | 75 | 95 | 118 | 150 | 190 | 236 | ||
1.5 | 67 | 85 | 106 | 132 | 170 | 212 | 265 |
○公差域クラス:
公差域クラスは6H、6gのように、公差グレードの後に公差位置を付けます。公差域クラスはねじの寸法許容差を指示するために使用します。
一例として、公差域クラス6G(めねじ)と、6g(おねじ)について、公差位置と公差グレードの関係を図5に図示しました。
下記コラムでは、公差域クラスから、許容限界寸法の計算方法を一例をあげて説明していますので参考にして下さい。
なお一般用おねじ及びめねじの許容限界寸法(はめあい区分:中、はめあい長さ:並)は、計算しなくてもJIS B 0209-2に掲載されておりますので一度ご覧下さい。
今回は紙面不足のため、ねじの公差について次回以降、もう少しお付き合いお願い致します。
許容限界寸法の計算方法一例
おねじM10、ピッチ1.5で公差域クラス6gのときに有効径の許容限界寸法を求めてみます。
まず表2より公差位置gの基礎となる寸法許容差は-32μm、表3より有効径の公差グレード6の公差は132μm、従って有効径の
上の寸法許容差es = -32μm
下の寸法許容差ei = -32μm – 132μm = -164μmとなる。(※3)
よって、有効径d2の許容限界寸法は、表1より呼び径10mm、ピッチ1.5mmの有効径基準寸法が9.026mmだから、
d2最大:9.026-0.032 = 8.994mm
d2最小:9.026-0.164 = 8.862mm となる。
(※3 上記の寸法許容差は計算しなくてもJIS B 0209-3に一覧表で掲載されていますので、設計、製造時にはそちらを参照すると便利です。)