街中を歩いていると、取付ベース部が六角ナットで固定されている街灯等を見かけます。最近は六角ナットにカバーされているため見えないことがありますが、中にはナットがむき出しになっているものがあります。それをよく見ると写真7のように六角ナットが2個重ねて締め付けられているものもあります。これはダブルナットと呼ばれるもので、ナットの緩み防止対策で施工されます。
写真7 街灯のダブルナット |
ダブルナットの施工は緩み止めの原理を理解した上で行う必要があり、単に2個のナットを重ねて締めるだけでは、緩み止めの効力を発揮しません。
ダブルナットが正常なボルト軸力を維持した上で緩み止め効果を発揮するためには、締結完了した時点で、図1のように、ボルトの締結に必要な軸力F1と、上下両ナット間に働く力F2が必要です。F2は上下両ナットの緩み防止に必要な力で、この力により上下ナットとボルトとのねじ山間で摩擦力が発生し、上下ナットの緩みを防止します。
図1 ダブルナットによる緩み止めの原理 |
また、ボルトの締結に必要な軸力F1は上ナットにかかるので、上ナットの方に厚みのあるナットを使うのが正しい使い方で、図2においては、(a)と(c)が正しく、(b)は間違った使い方のようです。(私は以前(b)が正しいと思っていました。)
図2 ダブルナットの上下ナット組合わせ可否 |
さて、参考文献(※1)によると締結完了後に図1のような力を得るためには次のような締結(図3参照)をすればよいということです。
〇ダブルナットの締結方法:
1.下ナットを規定トルクT1で締める。このとき下ナットのねじ山の上側とボルトのねじ山が接している。
2.下ナットが回転しないように、下ナットをスパナで固定してから、上ナットを規定トルクT2で締める。締め付け完了すると、上ナットのねじ山の上側とボルトのねじ山が接し、ボルトの軸力は上ナットにかかる。下ナットのねじ山には軸力はかからない。
3.上ナットをスパナで固定して、下ナットを逆回転させる。これで上下ナット間に力F2がかかり図1の状態となる。
図3 ダブルナットの締結法 |
以上、ダブルナットの施工方法についての雑学でした。実際の施工ではトルク管理が結構難しそうで、事前の十分な検証試験で軸力とトルクの関係を把握しておく必要があるのではと思います。
※1 本記事の内容は下記書物を参考にしました。この書物によると、上記記事の締付トルクはT1≒T2としています。
参考文献:増補ねじ締結概論 工学博士 酒井智次著 ㈱養賢堂発行