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タップのねじ下穴についての考察(160号)

弊社「ねじの情報サイト」https://neji-trivia.jp/にグーグル検索でアクセスされるとき、「ねじ下穴」というキーワードが結構多いようです。そこで、今回は、ねじの下穴について考察をしてみたいと思います。
一般的に、めねじを切る場合には、予め円い下穴をあけた後に、タップという刃物でねじ切り作業を行います。

写真5 ハンドタップ

下穴の径は、ねじの規格や呼び径によって決められており、タップメーカーが提示している表1のようなタップ下穴径表に従った下穴をあける必要があります。

ねじの呼び ピッチ
(mm)
下穴径
(mm)
M3 0.5 2.5
M4 0.7 3.3
M5 0.8 4.2
M6 1.0 5

ところが、メートルねじの場合には、タップ下穴径表が無くても、式1で、計算できます。
タップ下穴径=ねじ外径 - ピッチP … 式1
例えばメートル並目ねじM3、ピッチ0.5のときには、下穴径は3-0.5=2.5となり表1の値と合致します。
普段何気なく使っている式1ですが、分かりやすい計算式で、この式がどのようにして導かれたのかを、まず簡単のために、図1のメートルねじの基準山形(JIS B 0205-1)で考えてみました。

図1 メートルねじの基準山形
(JIS B 0205-1)

図1でdがおねじの外径、D1がめねじの内径です。タップ下穴径は、めねじの内径とほぼ等しいと考えると、D1が下穴径になります。
図1を分かりやすくしたのが図2です。これを基にして、式1を導いてみます。

図2 メートルねじの基準山形の簡略図と下穴径の計算

1.おねじの外径dからH1(おねじとめねじの重なった部分の高さ)の2倍を引くとD1になります。(式2)
2.H1=(5/8)Hなので、これを式2のH1に代入します。(式3)
3.図2下図のように、ピッチPとHの関係が求められますので、これを式3のHに代入します。(式4)
4.定数部分を計算すると、D1≒d – P (式6)
で、おおよそ式1となりました。
ところで、式6は基準山形に基づいて導きましたが、実際には、ひっかかり率を考慮する必要があり、ネットで検索すると、式7のようなタップ下穴径の公式がありました。式7は式5にひっかかり率を考慮したもので、ひっかかり率が92.38%のときにピッチPにかかる係数が1となり、式1と等しくなることが分かります。

図3 下穴径とひっかかり率の公式
(オーエスジー株式会社様資料から抜粋)

ところで、以上述べたタップ下穴径はあくまでも標準値であるため、厳密には、タップ種類、被削材の材質等によって切削条件が異なるため、タップの折損防止や切削条件の向上のため、下穴径を調整する場合があります。
なお、ひっかかり率については、本誌の第102号で簡単に説明しています。ご参照ください。

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